中国のソースコード強制開示制度は組み込みLinuxを爆発的に普及させるか?

中国、IT「ソースコード」強制開示強行へ…国家機密漏洩、知財流出など国際問題化の懸念

中国で作ったものを中国以外の国へ輸出する場合、あるいは中国以外の国で作ったものを中国へ輸入する場合、中国当局に対するソースコードの開示が強制されるみたいです。
ソースコードの開示が強制されるというのは、「そのソフトウェアがどういう仕組みで動いているのか」を中国に丸見えにするようにしなければならないということです。
もちろん、その丸見えの仕組みをコピーしてコピー製品を製造するのも、中国の自由です。
暗号方式も例外ではないでしょう。
となると、例えば汎用的なセキュリティ製品に関しては、中国に対するあらゆるセキュリティが無意味になるということです。


日本も困りましたね。
日本に資源があるとしたら、それは人の力であり、エンジニアの技術力です。
そこに対する巨額の投資、その成果としての技術が、すべて中国にコピーされ、正当な投資の結果としてのプロダクトは、コピー製品に蹂躙されるわけです。


中国とズブズブの関係になってしまっている企業の場合について考えてみましょう。
経営判断としては投資をやめるか中国から撤退するかのどちらかですが、中国からの撤退には巨額のコストがかかります。
かといって、投資をやめるとなると、その企業に将来はない。
そうなると、ソースコードというものが何なのかわかっていない経営者はソースコードを開示してしまうでしょう。
その結果、安価なコピー製品が出回ってしまい、その企業の投資は回収できなくなります。
そう、どのみち中国側による「王手・飛車取り」なのです。


プロダクトとしてまずいのは、ATMですね。
ATMの機械がどのようにセキュリティを保ち、どのようにお金のやりとりをしているのか、顧客情報のデータベースはどう設計されていて、暗証番号はどのように暗号化されているのか。
これがわかってしまえば、見ず知らずの誰かの預金が下し放題ですね。
まぁATMなら最悪僕らの貯金がゼロになるだけで済みますが、クレカだったらまずいですね。
限度額をシステム上の最大値に書き換えてしまえば、クレカも使いたい放題です。
もちろんその悪人がした買い物の精算をするのは僕たち。
無尽蔵の借金を一生かけて払わないといけませんね。
(その前にカード会社がオーナーを保護してくれるはずですが。)


では、この制度でソースコードが強制開示されてしまう僕らは、どうすればよいのでしょう?
「中国を撤退してインドやベトナムに移転」というのが最も安易な発想ですが、世の中そんなに甘くなくて、技術情報漏洩防止のためにかけるべきかどうか躊躇するほどのコストがかかってしまうでしょう。
それだけ、日本は中国の安い人件費に依存しすぎた。


僕は、ソフトウェアを使用するあらゆる情報機器を、インターネット接続可能なものにしていくべきかと思います。
炊飯器もインターネットに接続。冷蔵庫も、エアコンも。果ては自動車も。
で、何をするかというと、オープンソースソースコード開示が前提で作られているという意味で)技術だけで実装し、インターネットに接続したらバイナリプログラム(人が読み書きできるようなソースコードではなく、機械にしか読めないデータ)をダウンロードしてきて、実行するようにするわけです。
もちろんバイナリの実行部分も強制開示の対象ですので、ここもインターネット側に置いておきましょう。
すなわち、中国で輸出入される情報機器にはオープンソースのOSと仮想マシンの実行環境、そしてプロダクトごとのダウンロード先の指定しか入っておらず、情報機器はまず仮想マシンをダウンロードし、その仮想マシンがバイナリをダウンロードして実行するわけです。
仮想マシンで実行されたバイナリはハードウェアを制御できるようにしなければならないので、そこは汎用的なインタフェースを策定するのが良さそうです。


こうすることによって、中国はどのプロダクトのソースコードを強制開示したとことで殆ど中身は同じ、しかもオープンソースだからこんな強制開示なんかしなくても手に入るソースコードばかり、異なるのはダウンロード先のURLだけという展開になるわけです。


ここで上記のOSの部分なのですが、やはり汎用性でLinuxか、それかハードウェアとの親和性でNetBSDか、という二択かなと思います。
どちらにしても、こうなったとしたらOSの存続という意味ではかなり揺るぎないものになりますね。
当然、ソースコードを公開できないWindowsは蚊帳の外です。
Mac OS Xはというと、地味にDarwinという形でソースコードが公開されているので、Appleにとってはチャンスかも。


このシナリオは僕らにとってもメリットがあって、すべての機器がインターネットにつながることで、付加価値が得られるわけです。
例えば、冷蔵庫から中身の情報を取り出すことができれば、買い物、品質の維持、健康管理、レシピといった観点からあらゆる情報と連携することが可能になります。
家電が歴史的な進化を遂げることも不可能ではないのです。


いやぁ、さすが中国。ここまで見越していて、自ら世界の技術的発展のためお役に立ちたいのですと申し出たわけですか。
これはもう、中国さまさまですね。
とっととやっちゃいましょう。プロジェクト名は例えば「Free Tibet」で。